コーヒーのしずくと紙のしみ

好きなこと書いていけたらいいなって思います。

投資家が「お金」よりも大切にしていること

 

投資家が「お金」よりも大切にしていること (星海社新書)

投資家が「お金」よりも大切にしていること (星海社新書)

 

  ふと目をやると、少し前までは緑々と茂っていた葉先から秋の訪れが感じられる季節になりました。まだまだ日中は暑いと感じるほどですが、日が沈みかける頃には肌寒くなってきています。窓の向こうから聞こえる虫達の合唱は、囁きにうつり心地よさをも感じさせる時期ですね。

 

 最近まとまったお金を使う機会が多くあり、そろそろ冷静にお金を貯めていかないといけないなと思う事が増えました。でもこんなに自分を振り回すお金っていったい何なのか?と同時に疑問を抱きます。社会的だとか文化的な生活を営む上では欠かすことのできないもの。生きていく上ではきちんと向き合っていかないといけないものだとはわかっているのですが、その実何も理解していないじゃないかと自分の不甲斐なさにも気づいてしまいます。

その時に思い出したのが糸井重里さんがやっておられるほぼ日刊イトイ新聞での対談で、ひふみ投信という投資信託を経営されている藤野英人さんとのやり取りを思い出しました。この人が去年に出された本「投資家がお金よりも大切にしていること」。手にとった時、書き出しに興味を惹かれてしまい一息で読んでしまいました。

 

 ー人生でいちばん大切なカネの話をしよう(本作内容)

 

 お金って一体何なのか?言うまでもなく、皆が必要として欲しているものです。ですが日本においてはお金の具体的な話をするのは割合禁句として見られています。年収の具体的な内容を聞くのは女性に体重を聞くのと同じくらいの無礼ではないでしょうか。

わかっていることは、お金とは貨幣とは、商品に与えられた数字いわば価格に対しての等価交換を行うためのある種の象徴みたいなものでしょうか。以前読んだ「ヴェニスの商人資本論」でも同じような問いかけをもって考えてみたのですが、具体的なところまで踏み入ることができていないなと実感します。なんとなくわかるのだけれど理解ができていない。日々使っている割にはお金に対して実感が無いものです。

 日本においては、お金持ち=悪という考え方が強く根付いています。お金を稼ぐには悪いこともしなければならない、日々のニュースに時たま目をやるだけでもお金を悪い方法で稼いでいる人達が捕まっています。そういった面ばかり見ていては、無知な私でも悪い事をしなければ稼げないのかと思ってしまいます。また地に足をつけて稼いだお金じゃないといけないという考えもあります。不労所得、自身の持つ資産を活用してお金を稼いでいる人には多くの人が良い感情を抱かないのではないでしょうか。コツコツと地道に稼いでこそ日本人としての美徳があると私の勤務している会社でも近いことを言っている人たちが多くいます。その考えは間違っていないけれど、なんだかひっかかるなと感じます。

プロレタリアートとブルジョワジーの違いとは、プロレタリアートは自身の時間や体力、知力を消費して稼ぐ人であり、年収が何千万と言う人でもその人はプロレタリアート、無産階級です。一方ブルジョワジーとは、お金がお金を生む仕組みを持っている人です。ざっくりと年収200万の人でも、お金がお金を生む仕組みを持っている人はブルジョワジー、資本家階級です。若干話が逸れてしまいました。

 

 お金が絡む事象は経済として考えられます。じゃあ経済って一体何なのか?

ー経済というものは、その語源からして「みんなの幸せ」を考えるものなんですね。

Economy(経済)の語源は、ギリシャ語のオイコノミアです。中略(作中p97)

 

ギリシャ語のオイコノミアとは「共同体のあり方」という意味で、経済学の本質とは「どのように生きたらみんなが幸せになれるかを考える」ということです。ちなみにエコノミーを「経済」と訳したのは諸説はいくつかありますが、明治時代に福沢諭吉が訳したという説が有力です。経済という日本語は「経世済民」という言葉からきており、これは中国の東晋時代に同郷研究科の葛洪が訳した「世を納め、民を済う」という意味です。

つまり私達が、個人としてだけではなく、どのようにすれば幸せになれるのか「お金を通してみんなの幸せを考える事」が経済なのではないでしょうか。

 

 藤野英人さんが投資先を選ぶ際には「成長する会社」を中心に投資しています。大手だだろうが中小だろうが、社会のために役に立っているかどうか「みんなの幸せを考えている」真面目な会社かどうかというのが判断材料になっています。この考え方は単純明快ですね。具体的な内容までは是非本を手にとって見ていただきたいのです。

投資=マネーゲーム、博打ではなくて、みんなの幸せを考えている真面目な会社を応援するための手助けではないでしょうか。

お金にこだわるのは卑しいことではなくて、結局必要なものなのだからみんなの幸せを考えるためのものとして向き合えば、もっと誠実にお金のことを考えられるのではないでしょうか。読み口も優しくわかりやすいので、お金を儲けたいとかお金って何だろう?と少しでも思っている人、まだ就職していない学生の方にも読んでみてほしいです。