コーヒーのしずくと紙のしみ

好きなこと書いていけたらいいなって思います。

かないくん

 

かないくん

かないくん

 

 

 人と待ち合わせる前に何かを思い出して目についた本屋に寄って、最初からわかっていたかのようにくぐもった一角に足を進めてから、思い出したことにようやく体が追いついた。買おう買おうと思っていたかないくんを本日購入しました。

 

ー死ぬって、ただここにいなくなるだけのこと?(本作内容)

 

 詩人谷川俊太郎さんが、一夜で綴り、漫画家松本大洋さんが二年かけて描いた絵本。

「死」について書かれた絵本。精一杯生きることに目を向けた時に、どうしてもその先にある死の存在がちらついてしまいます。そんな一見消極的にみえる考えた方も生きるために欠かせないものだと感じます。

 「かないくん」はあっさりと物語が進んでいきます。四十数ページしかない短い絵本の中に雪のようにすっと消えてしまいそうなメッセージが散りばめられています。そのどれもが読む人の目線によって姿を変えてしまう小さな結晶のようにも感じます。

上質な芸術と同様に、この絵本がどう素晴らしいのか。なんて言葉にすればするほど、言葉の間からすり抜けてしまいます。おそらくそれは意識の外でやり取りされている類のメッセージなんじゃないかな。

 

 物事を、物語を理解するのは知識だけではなく体験が必要になります。体験することとは、身体化することで他ならぬ自分自身が何を思うか、感じるか。それがとても大事だと私は思います。死を理解するとは体験でしか成し得ないのでしょうか。死がやってきた時に自分は何かを思い、感じることが出来るのでしょうか。谷川俊太郎さんは「死」について私が考えるよりも、より身近に感づいているのではないでしょうか。

 

ー真っ白なまぶしい世界の中で、突然私は「始まった」と思った。

 

 「始まった」と思った。死んでからこそ出来ることも、きっとあるのですね。あったらいいですよね。私はずっと、死んだらやりたいことが、一つだけあります。そのうち私が死んでから真っ先にやることはもう何年も前から心に決めています。「できるかな?」と思った時期もありました。「もういいかな」と思ったこともあります。でもこの絵本を読んでから「やってやろう」と改めて決意できました。こう言うと退廃的に感じるでしょうか。死ぬ希望と生きる希望、背中合わせの二つはきっと大事な自分の幹を固く強くしてくれると思います。

ただ、今は生きる希望のほうが煌々と道を照らしているのは間違いないです。

 

 この本を読んで、何を思うか、感じるか。是非実感してみたください。