コーヒーのしずくと紙のしみ

好きなこと書いていけたらいいなって思います。

美女と野獣


Beauty and the Beast (From "Beauty and the Beast"/Official Video)

 

 思い出というのは、綺麗な状態で思い出せる。私の実家では、当時でも少し変わっていたようで、クリスマスの時期になると決まってサンタさんからディズニー映画のビデオが送られてきました。私と兄、男兄弟しかいないなかではなかなか珍しいようで、ディズニーの、それもクラシックスを中心に、毎年送られてきており少し受け入れがたいものがありましたが、結局何度も何度もテープが擦り切れてしまうほどにそれぞれを見たものです。今となって良い教育だと感じており、それは兄の娘にも受け継がれております。もし私も可能であれば、そうしたいものです。可能であれば。

 

 白雪姫、ピーターパン、シンデレラなど数々の名作がある中でひときわ私のお気に入りだったのは美女と野獣です。コミカルなキャラクターに素敵な音楽で、今でもテーマソングはお気に入りの曲の一つです。

 

 最近それが実写化され、これは見ないとと思ってましたが、公開から少し時間がかかってようやく先日見ることができました。 

トーリーに関してはほとんどの方がご存知の内容に、加えて今回の映画オリジナルの内容も盛り込まれておりました。劇中のミュージカルも然ることながらメインテーマも相変わらずステキで美しく、思い出も相まって人知れず涙を流したのここだけの話です。

 

 映画「美女と野獣」はもちろんディズニーのオリジナルの内容ではなく、18世紀ごろにヴィルヌーヴ夫人という人によりはじめて文字で表された恋愛物語として世に生まれました。もともとはもう少し昔から口頭伝承で受け継がれる物語でしたが、形となって生まれたのはこの頃から。

 それ以前から口頭伝承で様々な「美女と野獣」が紡がれていますが、今のディズニーの内容にもっとも近いのがフランスの芸術家ジャン・コクトーによる実写映画が公開されたものの影響が強いと言われております。一度だけ見たことがあるのですが、いかんせん白黒映画でフランスの文化の側面が強く、子ども心には思っていたものと違ったようで、ほとんど記憶にはありません。

 物語が生まれた背景がざっくりこのような感じでして、おのおのが違った物語を持っております。おのおのに共通しているのが「女性の権利」、例えば自由恋愛や思想などを、影響させたものと私は認識しております。

 

 今回の美女と野獣の登場人物ベルは村では変わり者として扱われています。女性なのに本が好き、女性なのに読み書きができることを疎まれている。旧来的な価値観に囚われた女性が自身の自由を獲得していく内容としても見られます。

 ディズニーの「美女と野獣」が公開されたのが1991年。

もともとディズニー映画はプリンセスがプリンスと恋に落ちる内容が多く一種「女性の価値観を固定化する」という批判が多かったようです。

ただ「美女と野獣」は女性と接していく中で、野獣が女性に心を開き結ばれる、いわばそれまでの典型的と言われる内容とは若干毛色が異なる内容となっております。

題材として、何故これを選んだのか正確な所は把握できていないのですが、今までの潮流から少し変わったものを選び取ったのは間違いないとは感じています。

 

 

 当時のディズニーと今回の実写映画の細かい違いを挙げていくのはいいんですけれど、何より一番気になった違いはBeastのキャラクター性の違い。

実写映画の中ではシェイクスピアの一節が好きだというように、王子として教育を受け、感性豊かな知的な紳士という風になっておりました。一方ディズニー映画ではちょっとドジで、愛敬のある大型犬のような愛すべきキャラクターだったと記憶しております。

こういったキャラクター性の違いも一つ、当時と今の時代背景を反映しているのでしょうか。さすがに1990年の理想的な男性像というのは把握していないのですが、ざっくりとくくりますと実写映画のBeastは「今風」と表現するのが適しているのではないでしょうか。

 またこの映画を改めて見て思ったのは美女と野獣の恋愛的側面も強い一方で、後半のガストンおよび村人の狂気の側面もあるのかなと感じています。今までの物語が一変し急に村人達が野獣討伐に出向かうシーンにおいては集団心理、狂気に触れたものだったのではないか。

 

 改めて幼少期に過ごしたものに違った形で触れる経験をして、走馬灯のように当時の記憶に折に触れる機会がありました。

もしかすると人は青春時代に触れたものを死ぬまで反復し続けるのではないかとも感じています。多感な時期に、最も影響を受けたものを懐古的に、死ぬまで反復し続けるのではないかと。いわば最初に形成された好みを基に、近しいものを追い続ける。

 

 最近は昔に触れたものを反復する機会が少なくて、摩耗する日々が続いていますので、そのあたりをもっと反復していかなければと思っています。

 

 さて結局何が言いたかったのかわからないのですが、久しぶりに素晴らしく美しいものを見て何かを言いたくなりました。過去にディズニーの「美女と野獣」を見たことがある人は絶対に見たほうがいいですよ。