読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

コーヒーのしずくと紙のしみ

好きなこと書いていけたらいいなって思います。

女ぎらい ニッポンのミソジニー

感想

 

女ぎらい――ニッポンのミソジニー

女ぎらい――ニッポンのミソジニー

 

 男だから、女だからなんて言い方は余り好ましいものではありませんが、無意識のうちにそういった物の考え方はしてしまっている。こんなことは誰しも経験があると思います。私は男だから、どうしても男的な考え方でしか女性のことを想像できません。一方で、おそらく女性も女性的な考え方でしか男性のことは想像できないのでしょうか。どちらかと言うと、男からのそれは大体的外れであり、一種の願望めいたものを帯びていて女性目線のそれは割合当たっているのではないでしょうか。

 

 そういった男性的だとか女性的だとか、性別の話に強烈な一石を投じた上野千鶴子女子「女ぎらい」。フェミニストとまではいきませんが、私は男性よりも女性のほうが生き物として強いんじゃないんだろうかと思います。そういう意味では女性支持者であり、まわりに母親やそれ以外の方に、逞しいなあと思わせる女性が多いためにそう思うことが多分にあります。あくまでも自称としての立ち位置で中立的に性差を認識しているつもりだったのですが、そんなことありませんでした。男の中に潜む、自分でも意識していないか、あるいは無意識に避けようとしている自分のなかの仄暗い欲望めいた願望を白日のもとに引き出して見せてくれます。結構強烈な内容でした。

 

ー ミソジニー。男にとっては「女性嫌悪」、女にとっては「自己嫌悪」。――「皇室」から「婚活」「負け犬」「DV」「モテ」「少年愛」「自傷」「援交」「東電OL」「秋葉原事件」まで…。上野千鶴子が、男社会の宿痾を衝く。(本作内容)

 

 ミソジニーとは訳すとなると女性嫌悪。けれども女史は作中でミソジニーの男は女好きが多いと述べています。これは女を性欲の道具としか見なさない男性を指しており言うならばミソジニーとは女性蔑視と言える。性別二元制に深く埋め込まれた自覚し得ない核がミソジニーであり、この強烈なシステムのもとで男になり女になる者のなかで、ミソジニーから逃れられる者はいない。こと日本においては余りにも自明であるために意識することすらできないからです。

 

 ーエドワード・サイードは「オリエンタリズム」を、「オリエントを支配し再構築し威圧するための西洋の様式」、言い換えれば「東洋とは何かについての西洋の知」と定義した。だからオリエントについて書かれた西洋人の書物をこれでもか、といくら読んでも、わかるのは西洋人の頭のなかにあるオリエント妄想だけであって、実際のオリエントについてはわからない。(「女ぎらい」作中p15)

 

 オリエントを「東洋とは何かについての西洋の知」と位置づける考え方は、色々なことに応用できるなと思いました。昨今巷に溢れかえる恋愛論や性差の話、はたまたポルノ産業に関わるものの見地は「女性とは何かについての男性の知」であったり「男性とは何かについての女性の知」であるものが多いのではないでしょうか。こういう風に物事の見方の姿勢を定義付けることで、捉え方が明確になるとか変わってくるものは多くあるのではないでしょうか。

文学、のみならずポルノにおいて、サイードがオリエンタリズムについてそうしたように、男の作品を「女についてのテキスト」ではなく「男の性幻想についてのテキスト」として読めば、学べることはたくさんある。男が女を語っているふりをして、ある種の男の中にある謎をあきれるほど率直に語っている。

 純粋にムカつくとか嫌だなと思う発言や表現に直面した際に、それがどういった立場から発信されたものかと位置づけることで、向き合い方やあるいは対処法を判断できるようになる。女史がサイードを引用したのは、明確にするために、という点では素晴らしいなあと感じました。

 

 この本はミソジニーを土台にいくつかのトピックに別れており、それぞれについて感想を付き添わせていたら、膨大な量になってしまいます。男の人が読んでも女の人が読んでも「そういう考え方があったのか」とか「それが言いたかった」というような内容が本当にたくさんあります。フェミニストの中には女史の猛烈な支持者がいることも頷ける内容でした。

 作中p261にホモソーシャルホモフォビアミソジニーの三点セットの図があり、このモデルを理解することができたら本の6割以上は理解したと言ってもいいのではないでしょうか。

男にとっての女、男にとっての男、女にとっての女、女にとっての女の少なくとも4通りのパターンがあり、それぞれの理解、立場を明らかにする材料としては今までの私の中にはこれ以上は無いなと思えるくらいに頷けるものでした。

 
 女性も男性も、ぜひ手に取り読んでみてもらいたい。それほどまでに強烈な内容です。 
誰にとっても他人事ではない性別の話。どんな立場、姿勢であろうと今までに「男なのに・・・」「女だから・・・」等の考え方をしたことがないと言う人以外は是非とも読んでみてください。