コーヒーのしずくと紙のしみ

好きなこと書いていけたらいいなって思います。

永遠とか純愛とか絶対とか

 

永遠とか純愛とか絶対とか

永遠とか純愛とか絶対とか

 

 

 人が書いた文章を読むと、きっとこの人はこんな人じゃないかしら?なんて思う事があります。知り合いにも、この人の書くものはステキだなと思うような文章を書く人が何人かいます。すっごく丁寧に、上手に、風景を切り取って描写しているのにどことなくエロさを漂わせる人や、一言一言の選びに優しい重みをもった文章を書く人。読んでいるとその人が語りかけてくるような距離の近い文章を書く人。それぞれの個性がとても良く出ていて、読む度に凄いな。いいな。なんて思います。同時に人柄も出ていて、この人だから、こんな言葉が出てくるのかなとも考えさせられます。

 

 同じような事が小説を読んでいる時にも、こんな人なのかも?って思う時があります。日曜日に陽気に誘われながら、散歩がてらに図書館に寄り三番目に目についた本を借りてみようなんてフザケた思惑で本を選びました。縁か不幸か、三番目にあったのは岩井志麻子さんの「永遠とか純愛とか絶対とか」というどことなく都会の路地裏のような胡散臭さを漂わせるタイトルの本です。

 

 ーーこれは滑稽で残酷な笑い話。男と女の歪んだ愉悦を描く短編小説集。(本作内容)

 

 岩井志麻子さんに対しては、バラエティ番組でいけ好かねえなと言うような印象しか持っていなかったので、そんなことで無闇に人を嫌ってはいけない。せっかく本を出しているのなら単純にいけ好かないと思うのではなく読んでみようと思って目を通してみました。

 八篇からなる、驕った自尊心を持っているけれども、それに見合った容姿も能力も見当たらないどうしようもない男たちと、淡く妖艶で世界の果ての景色みたいに綺麗な異性達とのやり取り。それは幸せなのか不幸なのかあるいは目覚めるのか。ステキな地獄を描いた短篇集です。ブラックなユーモアにミルクを混ぜたような話で面白いです。けれども読んでいる最中は刹那的な麻薬、あっと言う間に読み進めてしまうのですが読後感に何も残らない。ありありと目に浮かんだ登場人物の名前すら思い出せない不思議な後味の本でもありました。

 

 書かれている文を読んでいると、どことなく……だから島国の男はつまらないのよ。とでも言わんばかりの作者の声が聞こえてくるような、肥大した自尊心をそのまま詰め込んだ印象を受けてしまう内容でもありました。予備知識としての作者の印象がそのまま出ている本、やっぱりいけ好かないと私は思ってしまいました。個人的には、岩井志麻子さんの本を二度と手に取ることは無いなと思わせる。そういう意味では、手にとって良かったかなと感じる小説でした。だけどこの人の描くホラー小説は絶対に面白いだろうなとも直感させる所もあります。こんな事を言いながらも恐る恐る手を伸ばしていることでしょう。

 

 色んな本を読んでみたら、書いている内容だけからのみならず、言葉の並びから色んな景色や人が思い浮かぶので、これに懲りずたくさん目を通すことができたらなと思います。何かお薦めがあれば是非教えてほしいです。